IT/AIの進化、持続可能な経済や社会、SNS含む世の中の膨大な情報など
複雑かつ変化の多い昨今の社会において、子供達が学校での学びを経て社会に出た時、
自分自身が社会に出てどんなことを学び、仕事をし生活をするのかなど生き方の選択を
直視させられることになります。
その時には、思った様に進まない物事や仕事や家族、
友人など学生時代以上に広がる人間関係も出てくることでしょう。
今、日本の教育でも重視される「生きる力」という文脈には、
主体性や探求性に加え、問題解決能力や他者との協業が
社会を生きる上で重要性が謳われています。
こうした力を引き出す上で、大いに有効なのが社会に開いた学びだと考えています。
生徒自身が学校から目線を社会に向けた時、
関わる人の幅や学校や家庭で見る世界と実社会の違い、
また社会課題や逆に夢中になれる対象物の発見など、
生徒自身の五感に働きかけながら学びを深めていけるからです。
弊社の県内学生向け産業フィールドワークの取り組み
2022年の夏休みに、県内中・高校3校を対象に
総合探求授業を行う学びプロダクション株式会社rokuyou
との連携で、弊社アパレル事業「Kizuna Okinawa」も沖縄の繊維産業をテーマにプログラムをコーディネート・講話をさせて頂きました。
総合探求授業というのは、文科省HPにて下記の様に定義されています。
総合的な学習(探究)の時間は、変化の激しい社会に対応して、探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目標にしていることから、これからの時代においてますます重要な役割を果たすものである。
県内産業の中でも、私が携わるアパレルや繊維という分野は、
子供達にとって衣服やファッションでは馴染みがあるものの、
モノづくりや産業の背景・課題は中々知る機会がないのが現状です。
要因には、洋服の生産背景にアパレル業界特有の素材やデザイン、
裁断・縫製と販売までグローバルかつ複雑なサプライチェーンということもあって、
消費側の視点でしか業界を見る機会がないことに課題があると思っています。
沖縄には、歴史的背景や当時の経済社会、
風土・文化から産業が変遷した繊維業界の変遷があります。
今回のフィールドワークでは、講話とフィールドワークの2部構成。
講話では、大きく下記記載の3つのテーマを設定しています。
学びの狙いとしては、産業を取り巻く社会課題に対して生徒個人の自分ごと化や
意識化のきっかけ作りです。
また、工房・工場見学ではモノづくりの尊さだけでなく、
沢山の挑戦と失敗があって市場に製品が出来る、
課題解決のプロセスを見てもらうことにあります。
【前半:講話の部】
①アパレル・ファッションの切り口からみる社会課題や多様な社会メッセージを知る
・環境や労働負荷、消費文化
(持続可能な事業とは?/購買の意識に問題提起する)
・ルッキズム、ジェンダーレス・インクルーシブデザイン
(人権や多様性のメッセージ)
・地域が生み出す商品と伝統工芸
(地域の繊維・紡績産業から生まれた商品事例と工芸の新たな付加価値化)
②沖縄繊維産業の歴史とかりゆしウェアの変遷
沖縄県衣類縫製品工業組合 事務局長 美濃氏 講話
・沖縄繊維産業の変遷
・かりゆしウェアの誕生背景・商品について
③新たな紅型の価値創造にアート切口で取り組む染色家「知花 幸修」氏の活動
知花幸修氏 講話
・新たな紅型の価値創造に挑戦した背景
・作品について
・伝統工芸作家の時給やモノづくりの背景
【後半:工房・工場見学】
一般の方(いや、おそらく業界の人も)中々入れない工場や工房に潜入して、
生産の背景や作品ができるまでの工程をみるのは貴重な体験です。
■実際に見て、聞く■
縫製工場には、30台以上並ぶミシンや裁断機、
縫製の順番に合わせたラインを一つ一つ説明してもらいながら話を聞きます。
機会音が鳴り響き、総勢50名ほどのオペレーターのみなさんや
見事なミシンを踏んで縫い上げる技術を目の当たりにし、
子供達からも質問が飛び交います。
引率の先生は、終始スマホで様子を撮影しながら興味津々でした。
(工場内は基本撮影禁止で、学習用のみの撮影でした。)
また、最後には売り場見学をして、実際にできた商品やテキスタイルの説明を受けたり、
生地のはぎれや残反でできた小物商品を紹介してもらいました。
株式会社日進商会さんでは、高校生を対象に
かりゆしウェアのテキスタイルデザインコンテストも行なっていて、
賞を受賞した高校生の作品をみながら盛り上がったりと、
参加した中学生の子供達も最後は興奮気味。
引率の先生に似合うかりゆしウェアを見立て、
引率の先生も納得の1着をご購入頂きました♪
紅型工房では、日頃使用している道具や制作した作品、資料を見せてもらいながら
講話で話せなかった、道具の紹介や紅型制作の工程や技法、作品解説、紅型への想いやワークスタイルをお話いただきました。
制作中の作品を知花さんが実際に目の前で実演制作もしてくださいました。
■驚き、どんどん興味が湧く■
最初は少し緊張がみられた生徒の皆さん。話が進むにつれて紅型の奥深さに驚き、
色鮮やかで細やかな職人の技が詰まっていて
知花さん特有の古典と現代を融合させた作品を目の前に思わず「カワイイ!」の一言。
「正直紅型に興味が無かったけれど、実際に丁寧にこだわって作られた作品を観て感動し、現代風のモチーフにもされていて、もっといろんな人に知ってもらいたいと思った。」
と生徒さんが感想を語ってくれました。
繊維産業側の視点
今回は繊維業界の企業や組合、工房の皆さんのサポートで実現した本企画の意義を共有し、継続していくことの重要性を話せたことも収穫の一つ。
県内でも縫製技術者の育成や産業人口を増やし、
この繊維産業をしっかりと県内を代表する産業として
根付かせて行きたいという思いがあります。
こうした授業協力の背景には、多くの産業においても同様に、
産業や事業に興味を持ってもらうことでインターンシップや雇用に繋げる目的もあります。
弊社としては、参加してくれた生徒の皆さんが
これからの衣服に対しての価値観や購買意識など
自分が着る衣服への意識を改めて捉え直すきっかけになったら幸いです。
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